大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)4071号 判決

被告人 岩下勝作、奈良新市

〔抄 録〕

弁護人の論旨第二点について。

論旨は、原判示第二の(三)の事実につき被告人岩下勝作の所為は職業安定法第五条にいわゆる職業紹介に当らないのであるから、これを同法第六十三条第二号に違反するものとする原判決は事実を誤認し、延いて法令の解釈適用を誤つた違法があるものであつて、破棄を免れない、と主張するものである。よつて按ずるに、職業安定法第五条の規定によれば、同法にいわゆる職業紹介とは求人及び求職の申込を受け、求人者と求職者との間における雇傭関係の成立を斡旋することをいうものであること従つて同法にいわゆる職業紹介というがためには求人者からの求人申込と求職者からの求職の申込との存在することを要することは所論のとおりであるが、右はあらかじめ一方において求職の申込があり、他方において求人の申込があり、その間に介在して雇傭関係の成立を斡旋する場合に止まらず、紹介者においてまず求職者からの求職の申込を受け、しかる後に自ら適当な雇い入れ先を物色してその雇い入れ方をしようようし結局その斡旋方の依頼を受け、その間に介在して雇傭関係の成立を斡旋する場合もあり得るのであり、かつ本件赤線区域内における業者の店で働く婦女の募集についてはいわゆる縁故募集又は店頭広告の方法によつていたことは原審受命裁判官の証人野本与喜雄に対する証人尋問調書により明らかなところであるからこの場合においては右斡旋方の依頼はすなわち求人者からの求人申込と解すべきところ、本件についてこれをみるに原判決挙示の証拠によれば被告人岩下の所為はまさにこの後者の場合に該当し、職業安定法第五条にいわゆる職業紹介に当ることは疑をいれないところであるから、同被告人の本件原判示第二の(二)の所為を同法第六十三条第二号に違反するものとした原判決には何ら所論のごとき違法の点は存しない。畢竟論旨は理由がない。

同第六点について。

論旨は、原判示第二の(一)及び第三の事実につき原判決には判決に影響を及ぼすべき事実誤認、擬律錯誤の違法があり、破棄を免れない、というのである。しかしながら原判決挙示の証拠を綜合すれば右原判決認定の事実は優にこれを認めることができ記録を精査検討しても原判決に事実誤認の疑はなく、また擬律錯誤の違法も存しない。弁護人は昭和二十二年勅令第九号第二条はその文理解釈上よりしても、また我が国における自発的売淫取締の沿革に徴してもその犯罪の主体たるべき者は婦女自身及びその相手方以外の第三者であることは明らかであつて、同条は婦女及びその相手方以外の第三者相互間において当該婦女を客体としてこれに売淫をさせることを内容とする契約をした場合を処罰の対象としているものである、と主張するので、この点につき審究するに、同条の犯罪の主体たるべき者が婦女自身及びその相手方以外の第三者であることはその文理解釈上明らかなところであるが、所論のごとく同条にいう婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした当事者をその婦女及びその売淫の相手方を除く第三者相互間のみに限定する理由については所論指摘の点を仔細に検討してもついにこれを発見することができないのであつて、むしろ原審のごとく、婦女に売淫をさせることを内容とする契約の当事者の一方が婦女であり、他方が婦女及びその相手方を除く第三者である場合にも、その第三者は本条に違反するものとして婦女を保護することこそ同条の文理解釈にも適合し、かえつて本条制定の沿革にも合致するものというべきである。所論は、畢竟採用し難い。論旨は理由がない。

(花輪 山本 下関)

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